バルトの楽園
幕末に関する会津出身者の著作物は、その余りの思い入れの強さに拒絶反応が出てしまう事がある。最初に読んだ本は山口弥一郎さんの書物で、心から戦没者を弔う気持ちになったのだけど、その後に触れた本はどうも…。私は生粋の多摩っ子で今でも多摩っ子のままなんで、会津人の気持ちなど判ろうはずもないけれど、せっかくの会津人の気高さが逆効果に思えてならない。会津の人達が受けた苦難は確かに私から見ても、余りにもひど過ぎる扱いをされていると思う部分も多い。関係者であれば尚の事、今日まで遺恨が残っていたとしても、それに対して部外者の私がどうこう言えるものではない。勿論、苦渋を乗り越えて活躍した人も沢山いるけれど、今生きる人達は会津人だけど当事者ではないのだから、先人の苦渋をただ苦渋にするだけではいけないと思うのだ。真面目で忠実で努力家の会津人。戊辰戦争で最も最悪なのは私に言わせれば徳川慶喜。頂点に立つ器のない人間が頂点に立ってしまった事が、そもそもの間違い。その器のない人間が頂点にいると言う事だけで、忠実さが裏目に出て振り回されてしまった会津…だと思っている。勿体無い…本当に勿体無い。だから振り回されまいとした西郷頼母を尊敬していたりする。今だから言えるんだろうけど。関係ないけど一番好きな会津人は山口弥一郎さん。郷土愛の優しさを感じるので。

本題に戻って、間もなく公開される映画「バルトの楽園」。実在の会津人・松江豊寿が第一次大戦の時、徳島の捕虜収容所の所長の立場で、捕虜であるドイツ人の人権を守り抜いたと言う実話。我慢強くて真面目で正義感の強い会津魂が本領発揮していると感じて嬉しい作品。是非遺恨を持ったままの方は、辛かった記憶だけを継承するのではなく、辛さをバネにして活躍した人の心を継承して欲しいと、外部の勝手な思いで願っていたりします。

くれぐれも誤解無きよう。私は会津が好きです。批判するつもりもないです。ただ、ただでさえ辛い出来事を、これ以上辛いものにして欲しくないだけです。

でもこの映画、本当に内容は素晴しいです。私がこのサイトで求めるものはまさしくこれです。場所が徳島って言うのも縁を感じます。長州でも薩摩でもないけど、すぐ近くだし。前売り買ったし、是非ご覧になる事をお薦めします。
2006/06/06